仁城さん親子がつくる木の器には…
仁城義勝さんの今年の木の器が届きました。
以下、長文になりますが、この機会に書いておきたいことがあります。もしよかったらお読みください。
仁城さんの器は1年サイクルで出来上がってきます。穂垂では2007年から取り扱いを始めましたので、今年で13回目の納品ということになります。
今年も無事にこの季節を迎えることができたことにほっとしています。
去年は地震で店の在庫の器の多くを割ってしまいましたが、仁城さんの器も棚から激しく落下したものはその被害を免れることはできませんでした。
当時、仁城さんに地震の被害を報告し、たくさんの作品に傷を付けてしまったことをお詫びし、修理の相談をしましたところ「直しますので送ってください」とすぐさま仰ってくださいました。
木の器は陶磁器に比べるとかなり割れにくいものなので、一個一個の器についたダメージはとても小さかったのですが、落下してあちこちにぶつかったり、器同士が擦れあってできた傷はなかなか厄介で、木目が透ける漆仕上げの仁城さんのような器の場合はわずか0,数ミリの深さの打ち傷を新品同様に直すのは不可能ではないにせよとても困難であることが見ていただいてわかりました。
そのままでももちろん使うには何の不足もありませんが、売り物としてはどうしようもない状態になってしまっているという、そんな作品が20数点ほどあったでしょうか。それらを前にして仁城さんは私にこんな提案をされました。
「これを僕に買い取らせてください。買い取った器は僕の知り合いや友人の困っている人たちに配らせていただきます。」 昨夏、仁城さんの暮らす岡山で大規模な浸水被害があったことはみなさんの記憶にもまだまだ新しいと思います。仁城さんの友人知人の方の中にも被災された方が多くいらっしゃったようで、食器も何もなくて困っている人たちがいるから彼らに差し上げたいとの申し出でした。
そうしたらみんなにも喜んでもらえるし、石澤さんにも少しでもお役に立てると思うから、ぜひそうさせてくださいと。
このときのことを振り返ると私はいつも自然と目に涙があふれてきます。今もそうです。
私は申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、仁城さんの提案に甘えさせていただき、わずかなキズが入って売るに売れなくなってしまった器が陶器を中心に他にもたくさんありましたので、それらを仁城さん親子に託して配っていただくことにしました。
息子さんの逸景さんはそんな器に対しても私に現金書留を送ってくださいました。もちろんそれはお返ししましたが、お気持ちは本当に嬉しかったです。
昨年は仁城さん親子だけでなく、お付き合いのある多くの作り手さんたちが様々な形で私に助けの手を差し伸べてくださいました。これらはみな今でも私の心の支えとなっています。こうして思い返してみると、周りの人たちに支えられながら生かしてもらっているんだなという思いを強くします。
そしてまた今も自然災害が猛威を振るっていて、今まさに困難に直面している方も多くいらっしゃることを想像すると心が痛みます。
しばらくはつらい日々が続くことと思いますが、支えあい助け合う気持ちというものは日本中どこにいても必ず存在しますので、どうか心折れないようになんとか踏ん張っていただきたいと切に願っています。
入荷分すべてではありませんし、画像の準備もまだできていませんが(どれも定番作品ですので過去掲載分を探していただくと色々出てくるとは思いますが)、オンラインショップの仁城さんのページの在庫状況を取り急ぎ更新いたしました。
逸景さんの入荷はまだですが、どこまでも優しく愛情深い親子のお気持ちが作品の中にも確実に詰まっています。
お二人の木の器はこの厳しい時代に慰めをくれるような優しさに満ち溢れています。
多くの方にその優しさに触れていただければ嬉しいです。
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