三笘修陶展開催を前に
三笘さんの新しい工房の一角には、さほど大きくない窓が一つだけある土間の小さな展示室、というよりかは接客のためのちょっとした茶室のような空間が設けられていました。
それは、木と土と漆喰に囲まれた、狭く簡素な空間ですが、その狭さゆえに自然と心が鎮まっていく、そんな空間でした。
押しも押されもしない人気作家となって多忙を極める三笘さんですが、忙しい中でも精神的な豊かさを失いたくないという想いが、その小さな空間に込められているように感じました。
そこで三笘さんが丁寧に淹れてくださる台湾のお茶を一煎一煎いただく毎に、少しずつお互いの心を解きほぐしながら、私たちは静かな対話を積み重ねて、今回の展示会に向かう気持ちを一つにする作業を行いました。
もちろんそれはその場でなくてもできることではありますが、その小さな空間とお茶を淹れてくださる行為によって、よりかけがえのない特別な時間になったように思います。
私たちが共有した今展のイメージは、「自然を集め、解き放つ」というものです。
三笘さんは自分の身近にある、木や石や土などの自然のものを自らの手で集めて釉薬の原料として使っておられます。
だから出来上がった器には自然のエッセンスが凝縮されて滋味となって表れています。
使い手は今手にしている小さな器に自然を見い出し、そして翻ってその小さな自然から、土や木や石やさらには光や風や匂いなど、その集積としての様々な自然に思いを馳せることができるのではないでしょうか。
ただしそれは天然素材をダイレクトに押し出した自然ではなく、あくまでも三笘さんというフィルターを通して浄化された自然の上澄みのような清らかなものであると申し上げたいと思います。
注がれた茶の芳しい香りとともに少しずつ解き放たれる三笘さんが掬い取った自然の芳香を味わっていただきたいと思っています。
運が良ければ作り手である三笘さん自身がお茶を淹れてくださるかもしれません。
皆様のお越しを三笘さんとともにお待ちしております。
皆様のお越しを三笘さんとともにお待ちしております。
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